日本臨床脳神経外科学会 2014.7.19
Find AFからCare AFへ ─外来通院患者の心房細動を見逃さないために─
聖麗メモリアル病院 岡部 慎一
佐藤明善 田村康夫 藤山陽子 杉山耕一 布施仁智 鎌田健一
株式会社ネクシモ 山形 勝 片柳達也
【目的】
心房細動(AF)あるいは発作性心房細動(PAF)は、心原性脳塞栓症(CE)の原因として重要な疾患であるが、予防のための抗凝固療法が充分に普及しているとは言いがたい。その原因は、無症候性AFの多くが見逃されている、または、患者本人がAF発症に気付かずにいることである。一般外来において、医療者側から、積極的に無症候性AFを検知する体制を整備し、簡易的なAF検知機器を開発してCE予防へつなげているので、その現状を報告する。
【方法】
1)Phase 1:不規則脈波(irregular heart beat: IHB)検出機能付きの自動血圧計(以下、IHB検出血圧計)を、外来患者診察前の脈不整スクリーニングに使用した。 2011年12月から2年間を調査期間とし、脈不整を検出した患者に対して積極的に心電図検査を行った。2)Phase 2:示指に装着したパルスオキシメーターからBluetooth通信で、Googleの7inchタブレットへ脈波情報を送信し、株式会社ネクシモと共同開発した脈波解析専用アプリ(pulse analyzer)によりAF判定をする。測定時間は1分以内である。2014年よりこの機器を臨床で試用した。
【結果】
Phase 1により新規に抗凝固療法が検討・導入されたAF患者は56人であった。外来通院患者の約0.2%であった。定期通院患者でもAFが見逃されていることが分かった。IHB検出血圧計であっても、慢性AF患者の4分の1でAFの脈不整を検知できず、精度は低かった。Phase 2においては、pulse analyzerが感度・特異度ともに高い割合でAFを検知できることが分かった。
【結語】
IHB検出血圧計導入により無症候性AF患者を発見できたが、精度に問題があった。今回開発した簡易的AF検知機器は、無症候性AFの早期発見に有用であった。Phase 1、2いずれにおいても、無症候性AFを発見でき、多くの患者でCE予防の抗凝固療法を導入することができた。このような取り組みにより、AFを発見し(Find AF) 、CE予防のAF管理(Care AF)へとつなげることができる。